「不動産営業はきついと聞くけれど、実際はどのくらい大変なのだろう」「毎月数字に追われて、もう辞めたい」「他の不動産会社へ転職しても同じなのだろうか」このように悩んでいる方もいるのではないでしょうか。

私は新卒で大手不動産会社へ入社し、約8年間、賃貸仲介の営業として働いていました。入社前は、不動産営業というと「お客様と一緒に部屋を探して、条件に合う物件を紹介する仕事」というイメージを持っていました。もちろん、それも大切な仕事の一つです。

しかし、実際に働き始めてみると、私が勤務していた会社では、単に部屋を紹介して契約を取れば終わりという仕事ではありませんでした。毎月の売上目標に加えて、管理物件の獲得、付帯サービス、キャンペーン商品など複数の数字を追います。さらに、給与には「前払い歩合」が含まれており、私の場合は月給約24万円のうち、基本給が約12万円、前払い歩合が約12万円という構成でした。

繁忙期には来店や内見、契約対応が集中し、休日でもお客様から連絡が入ります。物件を確保するために家主宅へ飛び込み営業を行った時期もありました。私はこの環境の中で次第に精神的な負担が大きくなり、最終的には営業職から事務職へ異動。その後、金融業界の事務職へ転職しています。

この記事では、8年間不動産営業として働いた経験から、以下について紹介します。

営業職全般の大変さではなく、できるだけ「不動産営業だからこそ大変だったこと」に絞ってお伝えします。

不動産営業がきついかの結論

結論。不動産営業のきつさはノルマだけでない

私が勤務していた会社では、売上、管理物件の獲得、付帯サービス、キャンペーン商品、店舗全体の目標など、複数の数字を同時に追っていました。さらに給与には前払い歩合が組み込まれていたため、「成果を出したら歩合が上乗せされる」というより、「毎月受け取っている歩合に見合うだけの数字を作らなければならない」という感覚がありました。

賃貸仲介では、お客様が動く土日祝日や引っ越しの多い1〜3月が忙しくなります。来店、物件提案、内見、申込み、契約、家主や管理会社との調整などが並行するため、数字だけではなくスケジュール面でも余裕がなくなりやすい仕事でした。

もちろん、不動産営業という仕事そのものが悪いわけではありません。成果を出し、数字を追うことを楽しめる人には向いている仕事です。一方で、私のように数字による評価や新規開拓を強いストレスに感じる人の場合、長く続けるほど負担が大きくなることもあります。

重要なのは、「営業が向いていない」と一括りにするのではなく、自分が不動産営業のどの部分をつらいと感じているのかを整理することです。

不動産営業がきついと感じた6つの理由

不動産営業がきつい理由。複数ノルマ・前払い歩合・飛び込み営業

1.売上だけではなく複数のノルマを同時に追っていた

不動産営業というと、「物件を契約して売上を作る仕事」というイメージを持つ人が多いと思います。私も入社前はそう考えていました。しかし、私が勤務していた会社で求められていたのは売上だけではありませんでした。毎月、次のような複数の目標が設定されていました。

  • 売上目標
  • 管理物件の獲得
  • 付帯サービスの契約
  • キャンペーン商品の販売

そのため、売上目標を達成したからといって、その月の営業活動が終わるわけではありません。売上は達成していても管理獲得が足りない。契約は取れていても付帯サービスが不足している。このように、一つの数字を達成しても別の数字を追う必要がありました。

さらに個人だけではなく、店舗全体の目標もありました。店舗のメンバー全員が一定の数字を達成しなければキャンペーンのボーナスがなくなることもあり、自分の成績が自分だけの問題ではなくなります。

「自分が数字を作れないことで、店舗のみんなに迷惑をかけてしまう」

そう感じることもありました。営業職にノルマがあること自体は珍しくありません。ただ、不動産営業で実際に働いてみて私が大変だと感じたのは、契約だけではなく、複数の指標を同時に追い続けなければならなかったことです。

2.月給の約半分が「前払い歩合」だった

給与制度も、入社前に抱いていたイメージとは違いました。私は営業職について、「基本給があり、成果を出せば歩合が追加される」というイメージを持っていました。しかし私が勤務していた会社では、「前払い歩合」という制度が採用されていました。

私の場合、月給約24万円の内訳は、基本給が約12万円、前払い歩合が約12万円という構成でした。つまり、成果を出したら12万円が追加でもらえるわけではありません。最初から毎月約12万円分の歩合を受け取っているため、それに見合うだけの売上を上げることが求められます。

数字が不足すれば、次のような可能性もありました。

  • 賞与に影響する
  • 評価が下がる
  • 降格の対象になる

私にとっては、「頑張れば給料が増える」というよりも、「すでに受け取っている歩合分を毎月回収しなければならない」という感覚のほうが強かったです。

一方で、成果を大きく出す人にはメリットもありました。実際にトップクラスの営業の中には、半期で100万円以上の賞与を受け取っている人もいました。ただ、その人たちは非常に長い時間仕事をしていることも多く、私には同じ働き方を続けるイメージを持つことができませんでした。

3.物件を増やすための家主への飛び込み営業がつらかった

私が不動産営業時代に特につらかった仕事が、管理物件や紹介できる物件を増やすための新規開拓でした。家主さんと思われる家を一軒ずつ訪問し、「お部屋を探しているお客様がいるので、お話を聞かせていただけませんか」と声をかけます。

しかし、家主さんからすれば突然知らない営業担当が訪ねてくるわけです。歓迎されることはほとんどありませんでした。玄関先で怒鳴られる。「帰ってください」と言われる。何度訪問しても話を聞いてもらえない。警察を呼ばれたこともありました。

それでも会社からは、「最初は断られるのが普通」「何度も通って関係を作る」という考え方を教えられます。理屈では理解できます。しかし、毎日のように拒絶される経験を重ねていると、私は次第にインターホンを押すこと自体が怖くなっていきました。

4.飛び込み営業へ行けず、公園で時間をつぶしたこともあった

ある日、どうしても次の家へ向かうことができなくなりました。会社からは物件を取ってくるように言われています。店舗へ戻れば、「今日は何件回った?」「話はできた?」「物件は取れそう?」と聞かれます。それでも、その日はインターホンを押す気力がありませんでした。

結果として、営業へ行っているふりをして公園で時間をつぶしてしまったことがあります。もちろん、仕事をせずに時間をつぶすことが正しいとは思っていません。当時の私自身も、逃げてしまったことに罪悪感を持っていました。

ただ、「次の家でも怒鳴られるかもしれない」「何も成果を持たずに店舗へ戻ったら、また数字について聞かれる」という気持ちが重なり、動けなくなってしまったのです。

この出来事は、今振り返っても「自分にはかなり負担の大きい働き方だった」と感じる出来事の一つです。

5.繁忙期は来店・内見・契約対応が一気に重なる

賃貸仲介営業では、年間を通して仕事量が一定ではありません。特に1〜3月は、進学、就職、転勤などによる引っ越しが集中します。来店したお客様から希望条件を聞き、物件を探し、内見へ案内し、申込みが入れば契約へ進めます。

同時に別のお客様から、「この物件はまだ空いていますか」「内見時間を変更したいです」「契約書類について確認したいです」と連絡が来ることもあります。一人のお客様だけを担当しているわけではないため、複数のお客様や物件の進捗を並行して管理する必要があります。

営業時間中は接客や内見で外に出ており、その後に書類や連絡対応を行うこともありました。不動産営業は「人と話して物件を紹介する仕事」に見えますが、実際には細かな調整や事務作業も多い仕事でした。

6.休日でもお客様や物件のことが頭から離れなかった

賃貸営業では、土日祝日に物件を探すお客様が多いため、基本的に平日休みでした。この点は入社前から理解していました。ただ、実際に大変だったのは休日の曜日だけではありません。

休みの日でも、「物件について確認したい」「内見の日を変更したい」「契約について聞きたい」といった連絡が入ることがあります。特に繁忙期は、休みの日でも翌日の案内や契約について考えてしまい、仕事とプライベートを完全に切り替えることができませんでした。

友人と休日を合わせることも簡単ではありません。私の場合、こうした生活が何年も続くうちに、「この働き方をこの先も続けられるだろうか」と考えるようになりました。

不動産営業でストレスが大きくなっていった

不動産営業。ありがとうの裏で消耗は積み重なる

最初から辞めようと思っていたわけではありません。お客様から「ありがとう」と言ってもらえることもありましたし、自分が紹介した部屋を気に入ってもらえたときは嬉しかったです。だからこそ8年間続けることができました。

ただ、数字、新規開拓、繁忙期、休日対応などが積み重なるにつれて、少しずつ余裕がなくなっていきました。当時は無意識に髪の毛を触り、そのまま抜いてしまうこともありました。出勤前から、「今日は数字について何を言われるだろう」「また飛び込みへ行くことになるのかな」と考えてしまうこともありました。

私は当時、「営業ならこれくらい普通だ」「みんな大変なのだから自分も頑張らないといけない」と考えていました。しかし、今振り返ると、自分にとってかなり負担が大きくなっていた時期だったと思います。

不動産営業に向いていると感じた人

不動産営業に向く人。数字を楽しむ・同時管理・初対面で関係構築

8年間働く中で、不動産営業で結果を出している人も数多く見てきました。その経験から、特に向いていると感じたのは次のような人です。

複数の数字を追うことをゲーム感覚で楽しめる人

不動産営業では、売上だけではなく複数の目標を管理する場合があります。「あといくら売上を作れば達成できる」「今月は管理獲得を何件増やそう」と目標から逆算することを楽しめる人は強いと思います。私の周囲でも、上位の営業ほど数字を見ることを嫌がるのではなく、目標達成のために行動を組み立てていました。

忙しい状況でも複数のお客様を管理できる人

賃貸仲介では、一日に複数のお客様を対応することがあります。来店、内見、物件確認、契約、電話対応などを並行して進めるため、スケジュール管理が得意な人には向いています。

初対面の人とも関係を作れる人

お客様だけではなく、家主や管理会社など、さまざまな人とやり取りします。特に新しい物件を開拓する場合、最初は関係のない相手との信頼関係を一から作る必要があります。人との距離を縮めることが得意な人には、大きな強みになります。

土日勤務や繁忙期の忙しさを受け入れられる人

不動産営業では、お客様が動くタイミングに合わせて働く必要があります。平日休みを好む人や、忙しい時期と落ち着く時期がある働き方を楽しめる人には合う可能性があります。

不動産営業が合わない可能性がある人

不動産営業が合わない人。数字評価ストレス・断られ引きずる・休日と仕事分離

反対に、私自身の経験から負担が大きくなりやすいと思うのは次のようなタイプです。

数字によって毎月評価されることが大きなストレスになる人

不動産営業では、売上や契約など成果が数字として表れます。私はランキングや毎月の数字を見るたびに落ち込んでいました。評価基準が明確なことをメリットと感じる人もいますが、数字が不足している状態そのものが大きなストレスになる人には合わない可能性があります。

新規開拓で断られることを引きずりやすい人

私は飛び込み営業で断られるたびに、「話し方が悪かったのかな」「また行かなければいけないのか」と考えてしまいました。新規営業を切り替えて続けられる人もいますが、一件一件を強く受け止めるタイプの場合、負担が蓄積しやすいと思います。

休日と仕事を完全に切り分けたい人

土日休みを希望している人や、休日は仕事の連絡を一切受けたくないという人は、会社選びを慎重にしたほうがよいでしょう。

同じ不動産業界でも会社によって働き方は異なるため、休日の連絡体制や繁忙期の勤務については転職前に確認しておくことをおすすめします。

私が不動産営業を離れた理由

不動産営業。辞めた理由は一つでなく積み重なり

辞めようと思った理由は、一つではありません。毎月の数字。前払い歩合へのプレッシャー。物件を増やすための新規開拓。繁忙期の忙しさ。休日のお客様対応。こうしたものが少しずつ積み重なっていきました。

そして、「この働き方をあと10年、20年続けることができるだろうか」と考えるようになりました。そこで私は、まず営業職から事務職へ異動しました。その後、不動産会社を退職し、金融業界の事務職へ転職しています。

不動産営業から事務職へ移って一番変わったこと

不動産営業。売上プレッシャーからの解放が変化

一番変わったのは、「毎月売上を作らなければならない」というプレッシャーがなくなったことです。もちろん事務職にも責任はあります。期限までに正確に仕事を進める必要がありますし、ミスをすれば周囲に迷惑をかけます。

それでも私の場合、営業時代のように、「今月あといくら数字が足りない」と考え続けることがなくなりました。休日も仕事について考える時間が減りました。収入だけで比べれば、営業で高い成果を出す人のほうが稼げる可能性はあります。それでも私は、今の働き方のほうが自分には合っていたと感じています。

不動産営業からおすすめの転職先

不動産営業の転職先。事務職・営業事務・カスタマーサクセス

不動産営業を辞めたいと思っても、「不動産営業しか経験がない」と不安になる人もいると思います。しかし、賃貸仲介営業では想像以上に多くの仕事を経験しています。

事務職

私自身が転職した職種です。不動産営業では、次のような業務を経験します。

  • 電話対応
  • お客様とのやり取り
  • スケジュール管理
  • 契約までの進捗管理
  • 書類対応

こうした経験は事務職でも活かせます。

営業事務

営業担当を支える仕事であるため、営業経験そのものが強みになります。「営業担当がどのタイミングで何を必要とするか」が分かるのは、実際に営業を経験した人ならではの強みです。

カスタマーサポート・カスタマーサクセス

物件を紹介することよりも、お客様の希望を聞いたり困りごとを解決したりする部分が好きだった人には選択肢になります。不動産営業で培ったヒアリングや顧客対応の経験を活かしやすい仕事です。

不動産業界のバックオフィス

営業という働き方が合わなくても、不動産業界で得た知識そのものを捨てる必要はありません。営業事務や契約関連のサポートなど、不動産の知識を活かしながら営業以外の仕事へ移る選択肢もあります。

別業界の営業

「営業そのものが嫌なのではなく、不動産営業の働き方が合わない」という場合は、営業職を続ける選択肢もあります。新規開拓中心から既存営業へ移るだけでも、働き方は大きく変わる場合があります。

不動産営業で身についた経験は無駄にならない

不動産営業の経験。次の仕事でも武器になる資産

私自身、転職するときには「営業しかしてこなかった」と考えていました。しかし改めて仕事内容を整理してみると、次のようなさまざまな経験を積んでいました。

  • お客様へのヒアリング
  • 条件に合った物件の提案
  • 内見の調整
  • 家主や管理会社との連絡
  • 契約までの進捗管理
  • クレーム対応
  • 複数案件のスケジュール管理

不動産営業を辞めたい人によくある質問(FAQ)

不動産営業FAQ。きつさ・繁忙期・年収の疑問

不動産営業は本当にきついですか?

会社や担当する業務によって大きく異なります。私が勤務していた会社では、売上だけではなく管理獲得や付帯サービスなど複数の目標があり、前払い歩合や店舗目標もあったため、大きなプレッシャーを感じていました。一方で、数字を追うことが好きな人や、成果が収入・昇格につながる環境を好む人には向いている仕事です。

不動産営業の繁忙期は大変ですか?

私が経験した賃貸仲介では、1〜3月に来店、内見、契約などが集中しました。複数のお客様を並行して対応する必要があり、通常期よりも仕事量が増えるため、スケジュール管理が重要になります。

不動産営業を辞めたら年収は下がりますか?

転職先によって異なります。営業職は成果によって高い賞与やインセンティブを得られる場合があるため、職種を変えることで収入が下がる可能性もあります。私の場合は、収入だけではなく、数字のプレッシャーや休日の過ごし方なども含めて転職を考えました。

不動産営業から異業種へ転職できますか?

可能です。私自身も最終的には金融業界の事務職へ転職しています。顧客対応、ヒアリング、スケジュール管理、契約までの調整など、不動産営業で得た経験を整理して伝えることが重要です。

まとめ|不動産営業はきついが、経験は次に活かせる

まとめ。不動産営業はきついが経験は次に活きる

私が8年間働いて感じた不動産営業のきつさは、単に「営業だからノルマが大変」というものではありませんでした。私が勤務していた会社では、次のような不動産営業ならではの負担がありました。

  • 売上以外にも複数の目標がある
  • 月給約24万円のうち約12万円が前払い歩合だった
  • 管理物件を増やすため家主への新規開拓があった
  • 1〜3月の繁忙期に来店や内見、契約が集中する
  • 土日祝日にお客様対応が集中する
  • 店舗単位でも数字を追う必要がある

一方で、成果が分かりやすく評価され、お客様の住まい探しに直接関われる仕事でもあります。大切なのは、「不動産営業がきついから自分は営業に向いていない」とすぐに結論づけることではありません。

新規開拓が合わないのか。数字の追い方が合わないのか。賃貸仲介の働き方が合わないのか。今の会社の制度が合わないのか。ここを分けて考えることで、次に選ぶ仕事も変わります。

「不動産営業が合わない」と「営業そのものが合わない」は同じではありません。自分が何につらさを感じているのかを整理したうえで、今の会社に残るのか、別の不動産会社へ移るのか、異業種・異職種へ転職するのかを考えることが大切です。

営業職そのものがきついと感じている場合は、営業全体の仕事内容や業界ごとの違いを整理した「営業はきつい?」の記事も参考にしてみてください。